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【プレスリリース】電気化学的にスイッチングする新たな触媒分子を開発

本研究のポイント

●電気化学酸化によりハロゲン結合性相互作用が強まる分子を開発し、これを触媒的に用いた分子内C-N結合形成反応を達成しました。
●本研究で開発した触媒に電気化学的な速度論解析を行うことで、触媒の性能を定量的に評価することに成功しました。
●電気化学的に活性化された相互作用がプロトンと電子の協奏的な移動を可能にし、これにより分子内C-N結合形成反応が促進されていることを実験?計算の両面から明らかにしました。

研究概要

 本研究では、ハロゲン原子とルイス塩基の間のハロゲン結合性相互作用を電気化学的に活性化し、プロトンと電子の協奏的な移動を可能にする新たな分子触媒を開発しました。これにより、電気化学的かつ触媒的にN-保護アミノビフェニルの分子内C-N結合形成反応を達成し、触媒の性能を定量的に評価することにも成功しました。本触媒の相互作用は電気化学酸化により活性化され、触媒分子は基質や塩基との複合体を形成します。実験と理論計算により、この複合体がプロトンと電子の協奏的な移動を可能にすることで本反応の速度と化学選択性が大幅に向上したことを明らかにしました。本研究は、未だ統一的な設計指針が確立されていない電気化学的触媒の新たな設計指針を提供することが期待されます。

 本研究成果は米国化学会の雑誌Journal of the American Chemical Society に受理され、オンライン版が 2026年1月8日に公表されました。

社会的な背景

 近年、電気化学を用いた分子変換技術が、持続可能な合成手法として注目を集めています。電気を使用して分子を活性化することで、有害な試薬を用いず、室温?常圧といった穏やかな条件での反応が可能となります。しかしながら、電極上で直接的に分子を変換する電解反応には、必要以上のエネルギーを要すること(過電圧)や電極の劣化といった課題が存在します。
 これらの課題を解決する手段として、メディエータと呼ばれる触媒分子が注目されています。メディエータ分子は電極と反応させたい分子の間の電子移動を仲介することで、これらの課題の解決に貢献し、化学反応の選択性や効率を大きく向上させることができます。しかし、メディエータ分子はその有用性にもかかわらず、どのような分子を設計すべきかの指針が確立されていません。特に、水素結合や分子間の引き合う力をはじめとした分子間相互作用を取り入れたメディエータ分子の開発は未開拓と言えます。
 本研究では、分極したハロゲンが示す特有の相互作用(ハロゲン結合性相互作用)をメディエータ分子の設計に取り入れ、これを電気化学的に活性化する新メディエータ分子を開発しました。その結果、炭素と窒素の間の結合形成を大幅に促進することに成功しました。本成果は、メディエータ分子の新たな設計指針を示すものであり、持続可能な電気化学的アプローチのさらなる発展に貢献できることが期待されます。

研究成果

 uedbet体育_uedbet体育投注-彩客网彩票推荐 信田尚毅准教授、跡部真人教授、東京大学 横川大輔准教授、須田佳代特任研究員の研究グループは、北海道大学の研究グループと共同で、電気化学的にスイッチング可能な相互作用を備えた、新しい電気化学的触媒(メディエータ)分子の開発に成功しました(図1)。特に注目すべきは、電気化学的に活性化されたハロゲン結合性相互作用の有機反応への展開で、これは前例がなく、多様な触媒分子の開発および電気化学の進展に寄与することができます。
 この反応では、まず電極上でメディエータ分子を一電子酸化し、電子不足な状態へと変換することで相互作用を活性化します。活性化したメディエータ分子に対してアミノビフェニル類が相互作用することでハロゲン結合複合体を形成します。複合体の形成により、プロトンと電子が協奏的に移動することで反応が進行し、最終的に分子内の芳香環と炭素-窒素間の結合が形成されます。
 本研究では、メディエータ分子にアントラセン骨格を採用することで通常は不安定な一電子酸化状態を安定化し、これにより触媒的な炭素-窒素結合形成反応を達成しました。この戦略に基づいて、様々なハロゲンを有するメディエータ分子を用いて、4種の異なる保護基を持つアミノビフェニル類からカルバゾール類を高い収率で合成することができました。
 さらに、理論計算や電気化学測定を組み合わせ、反応メカニズムを詳細に解析しました。その結果、ハロゲン結合複合体が安定化されていることから、相互作用が確かに存在していることが明らかになりました。加えて、複合体を形成することで弱い塩基を用いて、エネルギー的に非常に有利なプロトンと電子の協奏的な移動が生じていることが分かりました。
 このように、本研究は電気化学的に活性化される相互作用を備えた新たなメディエータ分子を開発し、メディエータ設計の新たな指針を提示しました。今後は、さらに高機能な新規メディエータ分子の開発や、電気化学反応の応用拡大につながることが期待されます。

図1. 今回開発した触媒とそれを用いたC-N結合形成反応
図1. 今回開発した触媒とそれを用いたC-N結合形成反応

今後の展開

 本研究で確立した「電気化学的に相互作用をスイッチングできるメディエータ設計」は、電気化学プロセスの過電圧の低減や電極劣化の抑制を通じて、より省エネルギーで持続可能な分子変換の実現に貢献します。今後は、ハロゲン結合の強さや電子状態を精密に制御した分子設計を進め、反応速度と選択性のさらなる向上と基質適用範囲の拡大を図ります。また、炭素-窒素結合にとどまらず、炭素-炭素結合形成など他の重要な結合の形成反応への応用も検討します。加えて、理論計算と電気化学測定を組み合わせて反応機構の一般化を進め、メディエータ設計の指針を体系化し、医薬品や機能性材料の合成プロセスへの展開を目指します。

謝辞

 本研究は文部科学省 科学研究費補助金(課題番号:21H05215、23H04911、23H04916、23K23386、23K17370)、公益財団法人 村田学術振興?教育財団、公益財団法人 日本科学協会の支援を受けて実施されました。

論文情報

掲載誌 Journal of the American Chemical Society
タイトル Redox-Switchable Halogen Bonding in Haloanthracene Mediators Enables Efficient Electrocatalytic C-N Coupling
著者 Atsuki Hirama, Kayo Suda,* Shohei Yoshinaga, Moto Kikuchi, Su-Gi Chong, Azusa Kikuchi, Yusuke Ishigaki, Daisuke Yokogawa,* Mahito Atobe,* Naoki Shida*
DOI 10.1021/jacs.5c18175新しいウィンドウが開きます

資料

研究者プロフィール

信田 尚毅新しいウィンドウが開きます
大学院uedbet体育_uedbet体育投注-彩客网彩票推荐 准教授

跡部 真人新しいウィンドウが開きます
大学院uedbet体育_uedbet体育投注-彩客网彩票推荐 教授

お問い合わせ先

<研究に関すること>
大学院uedbet体育_uedbet体育投注-彩客网彩票推荐 准教授 信田尚毅
メールアドレス: shida-naoki-gz ynu.ac.jp

大学院uedbet体育_uedbet体育投注-彩客网彩票推荐 教授 跡部真人
メールアドレス: atobe ynu.ac.jp

<報道に関すること>
総務企画部 リレーション推進課
メールアドレス: press ynu.ac.jp

(担当:リレーション推進課)


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